はじめに
機械設計であれば、誰もが使用するねじ。。
ただ、ねじは実際に”設計”をしているというより、”勘”、”経験”、 ”踏襲(模倣)” による ”選択” をしているのが実情。
もともと ”規格品を使用する事” による ”選択” を前提とした部品であり、めったにそれ自身の ”設計” を行う事はほとんどないねじであるが、勘等による選択だけでは、たまに困る時もある。
例えば、使用中に”緩み”が発生する場合とかとか。
少し知識加えれば、より根拠のある設計(選択)が可能になる。
ちなみにおすすめの本はこの二冊
”ねじ締結の原理と設計”は、ねじの理論的背景が一通り網羅されている(式の中の定数を数字に置き換えたりで、もうちょっと素直に書いてくれれば。。。とも思うが、情報量が豊富。持っていると安心できる)
”ねじ締結概論” は、より実務的な視点から書いてある(こちらの方がよりストレート)。
この二冊があれば締結に関する調べ事はだいたい事足りる(かと)。
ねじ(ボルト)の各部の名称
ねじの各部の名称
まずは、ねじの各部の名称。ねじにもいろいろ種類があるが、まずは六角のフランジボルトを例にとる。

ねじの呼び方
呼び径はおねじの”外径”。 ボルトナット問わず、一般的にこれがねじのサイズを示す。
ビスを除き、ボルト/ナットでは、メートルねじを意味する”M” と組み合わせてにて、M8のボルト、M10のナット等々で呼ばれる。さて、
平目ねじ(例:M10)
平目ねじは”M” に”呼び径”をつける (たとえば、呼び径10mmの平目ねじであれば、M10)。
各呼び径に対応するピッチは一種類のみのため記載不要(JIS)。
細目ねじ(例:M10x1.25)
平目ねじより小さいピッチの細目ねじの場合。
細目ねじの場合は、ピッチを追加して、 平目ねじの”M+呼び径” に、x”ピッチ”を追加(たとえば、呼び径10mmの細目ねじであれば、M10X1.25)。
その他:呼び長(首下長)も合わせた表示の場合
”M”+ ”呼び径” + ”x 呼び長(首下長)” を組みあわせた表記もよく目にする。たとえば、M6X18 -> 呼び径 6mm+呼び長 18mmの平目ねじ
(”xピッチ”と”x首下長”の表記が同じになるが、その表記されている長さとその含む意味が明らかに違うので、区別に困る事はあまりない)
まとめれば
<かかり代と伸び代>
ちなみに、おねじとめねじの勘合する長さをねじのかかり代(勘合長)、ねじの首下からかかり代までの軸の長さをねじの伸び代とよぶ。

続いて、”ねじ諸元の名称と定義”について
ねじ諸元の名称と定義
ついでに、ねじ部諸元の名称については以下。(小文字:おねじ、大文字:めねじ)
- ねじの呼び径:d (or D)
-> おねじの山径(めねじの谷径) - ねじの有効径:d2(or D2)
-> ねじの山径/谷径の間にて、山幅=谷幅の位置を径とする仮想円径 (dp) - おねじ谷底径(めねじ山径):d1 (or D1)
- ピッチ:P
-> 隣り合うねじ山同士の間隔 - リード角:β
-> ねじが一周まわる間に1ピッチ分上がる角度(一条ねじの場合:n条ねじの場合はn倍) - ねじ山半角:α
-> ねじ山頂点の角度/2(平目/細目ねじでは2α= 60°(π/6))
(ざっくり言えば、おねじ/めねじは正三角形の山の組合せ) - とがり山高さ:H
-> ねじ山を構成する正三角形の高さ


またとがり山高さは、\( H=\displaystyle \frac{P}{2\tan{\alpha}}\)
ねじの有効径は、
\(
\begin{align}
d_2(or \ D_2) &=d-2\cdot (\displaystyle \frac{H}{2}-\displaystyle \frac{H}{8}) \\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{3}{4}H \\[8pt]
&= d-\displaystyle \frac{3P}{8\tan{\alpha}}
\end{align}
\)
おねじ谷底径(めねじ山径)は、
\(
\begin{align}
d_1(or \ D_1)&=d-2\cdot(H-\displaystyle \frac{H}{8}-\displaystyle \frac{H}{4})\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{5}{4}H\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{5P}{8\tan{\alpha}}
\end{align} \)
を並目/細目ねじの基準山形として扱う。
Note:この先の軸力計算に用いるおねじの有効断面積Asには、谷底径のd1定義における切取り高さH/4 を(谷底面は円で接するとして)H/6で置き換えた径 d3を用いる。まずd3 は
\(
\begin{align}
d_3&= d-2\cdot(H-\displaystyle \frac{H}{8}-\displaystyle \frac{H}{6})\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{17}{12}H\\[8pt]
&= d-\displaystyle \frac{17P}{24\tan{\alpha}}
\end{align} \)
であり、この谷底径d3 と おねじの有効径d2 の平均値ds がおねじの有効断面積Asの径である。ds は
\(
\begin{align}
d_s&=\displaystyle \frac{d_2+d_3}{2}\\[8pt]
&=d-2\cdot(H-\displaystyle \frac{H}{8}-\displaystyle \frac{H}{6})\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{13}{12}H\\[8pt]
&=d-\displaystyle \frac{13P}{24\tan{\alpha}}
\end{align} \)
これを使い、おねじの有効断面積Asは
\(
\begin{align}
A_s &=\pi \cdot \displaystyle (\frac{d_s}{2})^2 \\[8pt]
&= \displaystyle \frac{\pi }{4}\cdot(d-\displaystyle \frac{13P}{24\tan{\alpha}} )^2
\end{align} \)
となる。
続いて、次ページにてざっくりと”ねじの締結の仕組み”と”締め付け線図”について
ねじの締結の仕組み(概要)
ねじによる締結とは、入力されるトルクを軸力に変換し(軸を伸ばして発生する力)、発生する軸力により被締結体を固定する事。
ボルトに入力されるトルクTf(T)は
- ねじ部に作用するトルク(a):Ts
- ボルト座面に作用するトルク(b):Tw
の二か所に作用し ( Tf = Ts + Tw)、
そのトルクは
- ボルトの軸部が伸びる事により発生する軸力(No.1)
- (1の発生により) ボルト座面に発生する摩擦力(No.2)
- (1の発生により) ボルトねじ面に発生する摩擦力(No.3)
の3つを発生させる。

また、被締結体は
- 発生するNo.1の軸力
:(ねじの軸方向) - No.1の軸力により発生する摩擦力(締結体と被締結体間、もしくは被締結体同士)
:(ねじの軸直角方向)
により固定される。
このボルトの軸力発生による被締結体を固定する仕組みが”ねじによる締結”の基本。